へーベルパワーボード
木造建築物のために開発された外壁用パネルをご紹介
詳細
有限会社ビルディングランドスケープ
お話を伺った方
有限会社ビルディングランドスケープ
山代 悟 様(代表取締役/芝浦工業大学 教授)
採用物件
都島プロジェクト(施主:オリオン建設株式会社)
採用製品
ヘーベルパワーボード
旭化成建材のヘーベルパワーボードは、大型ビル建築の外壁材に求められる耐久性や防火性などの性能を備えた、木造住宅専用の外壁材です。今回、都市木造マンション「都島プロジェクト」にて、当社製品を採用いただきました。西日本最高となる8階建の木造マンションはどのような背景の元に誕生したのか、建築家の山代様にお話を伺いました。
山代様:最初から建築家になりたいと思っていたわけではありません。もともとは医学に興味があったのですが、高校時代に進路を具体的に考えていく中で、あるときたまたま建築雑誌が目に留まりました。そこで「建築家」という仕事があると知り、工学部に進学して建築を学ぶことにしたのです。卒業後は先日亡くなった槇文彦さんの事務所に入り、7年間勤めた後に独立しました。
山代様:当初はしばらく勤めたら実務に集中しようと考えていたのですが、学生に建築を教える仕事も好きなのですよね。人に教えるとなると曖昧な知識を話すわけにもいきませんので、私の場合はそれが良い刺激になっていると思います。
学生にとっては建築の基礎を学ぶだけでも大変で、特に中大規模木造はハードルが高いのですが、少しずつそうした知識も伝えていきたいと考えています。
山代様:槇さんの事務所での修行時代は、それこそ「幕張メッセ」などの大規模建築に携わることが多く、基本的にはS造やRC造が中心でした。木造建築に触れたのは、独立後に築130年の歴史を持つ伝統的な地方の農家の改修について相談されたことがきっかけです。当時は守備範囲がまったく違いましたので、木造建築に詳しい先輩の腰原幹雄さんに相談し、いろいろご教示いただきながら設計を進めることにしました。
そこでさまざまなディスカッションを重ねる中で、LVL材(単板積層材)の存在を知ります。工業的な木材は自然そのままの木とは異なり、100年前にはなかった現代ならではの建材です。設計者として、この素材に興味を持ちました。
山代様:まだまだ試行錯誤の段階で標準設計もないため、課題は山ほどあります。中でもやはり、ハードルが高いのは構造と防耐火の問題でしょうか。きちんと耐震性や耐火性をクリアしたうえで、木造ならではの意匠性を表現するのはかなり難易度が高いと思います。
山代様:2021年正月にオリオン建設の社長から、木造のビルを建設したいとご相談を受けました。もともと120年以上前(明治35年)に木材商から事業をはじめた歴史があることに加え、これからの世代に受け継ぐために環境への影響も考えてのことでした。10年以上前から構想はあったそうですが、設計者が見つからずなかなか実現ができなかったと聞いています。そうした施主さんの強い思いを受けて、今なら技術的にも実現可能だと考え、設計に取り組むことにしました。
山代様:すべての階を木造で実現するのは難しいため、使用範囲を決めました。今回は5〜8階部分を1時間耐火、4階を2時間耐火で木造とし、それ以下の階層をS造にしています。室内の触れられるところに、木材の質感を残すことにこだわりました。
そこでやはり、耐火性と意匠性をどう両立させるか悩みましたね。特に苦労したのは、ブレースの裏側にあたる、1時間耐火外壁構造の納め方でしょうか。木材の柱梁にALCを付けて耐火性能が発揮できれば楽なのですが、そのための使用要件をクリアできるのがパワーボードしかありませんでした。
山代様:私が使用したときは塗装の選択肢が少なかったので、今後増えていくと尚良いですね。どうしても意匠性の幅が狭まり、同じような建築ばかりになってしまうのは設計者としてもどかしく思うところです。また、難しいとは思いますがさらに高層でも使えるようになるとうれしいです。
2024年6月インタビュー