木造の災害拠点施設に求められた「遮音」と「安全」
十津川村災害対策本部拠点施設で実現したユカテックの床遮音性能

株式会社アール・エフ・エー

お話を伺った方

株式会社アール・エフ・エー

福田 宇啓 様

採用製品

ユカテック

南紀地方に位置する奈良県十津川村は、2011年の紀伊半島大水害で甚大な被害を受けた地域です。復興支援の一環として新たに建設された「十津川村災害対策本部拠点施設」は、1階に診療所、2階に災害対策本部を備え、災害時には地域の指揮拠点となる木造建築。この設計を担ったのが、株式会社アール・エフ・エー設計室長の福田様です。床遮音材として旭化成建材の「ユカテック」を採用した背景と、現場での手応えについて伺いました。

建築家としての歩みと、今回のプロジェクトへの思い

まずは、福田様のこれまでのご経歴についてお聞かせください。

福田様:幼い頃からものづくりに興味があり、明治大学大学院で建築を学びました。学生時代は住宅研究を中心に取り組んでおり、その頃からRFA主宰の藤村の存在は知っていました。住宅だけでなく公共建築にも取り組むRFAの姿勢に魅力を感じ、入社して10年目になります。

これまで鉄骨非住宅などを中心に設計を手掛けてきましたが、今回の十津川村災害対策本部拠点施設は、私にとって初めての木造非住宅プロジェクトでした。大きな挑戦であり、設計者として新しい視点を学べる機会になりました。

木造を選択する背景について、どのような変化を感じていらっしゃいますか。

福田様:ここ数年で、クライアントから「木造でできないか」という要望は確実に増えています。SDGsやカーボンニュートラルの流れで、環境に配慮した建築への関心が高まっていることも大きな要因だと思います。これまでの非住宅は耐震性能・耐火性能をもつ鉄骨やRCが一般的でしたが、最近は木造ならではの柔らかい空間性や環境負荷の少なさも評価されるようになりました。

一方で、住宅用の材料や生産体制は整っていても、非住宅建築に必要な大断面材となると地域によっては供給が難しいケースも多いです。金物設計など専門的な構造設計の関与も不可欠で、材料調達や加工場との連携を設計初期段階から緻密に計画する必要があります。こうした課題を克服しながら、木造の可能性を広げていくことが私たち設計者の役割だと感じています。

Photo:Kenta Hasegawa

災害と日常、二つの役割を両立する建築を目指して

今回の十津川村災害対策本部拠点施設プロジェクトの背景を教えてください。

福田様:この建築は、2011年の紀伊半島大水害からの復興支援プロジェクトの一環として計画されたものです。設計はプロポーザル方式で行われ、「村の木を使った災害対策本部」というテーマで提案が求められました。

私たちは十津川村産のスギ材を活用し、小断面材を細かく組み合わせて大空間を構築するプランを提示しました。村民や有識者で構成されるまちづくり委員会と協議を重ね、屋根形状や細部の納まりも地域と一緒に検討しながら進めた点は大きな特徴です。単なる公共建築の設計だけではなく、村の木材を県外にアピールし、森林組合の技術力向上にもつながるようなプロジェクトとして位置づけられていました。

今回の施設の設計にあたり重視されたポイントを教えてください。

福田様:この建築は、1階に診療所、2階に災害対策本部(役場庁舎から防災対策課が移転)という構成になっています。上下階で用途が大きく異なるため、診療所の静けさを確保しつつ、災害対策本部として多人数が集まって活動できる環境を整える必要がありました。

さらに、災害が発生した際には本部機能を担う一方で、通常時には防災対策課が日常的な行政業務を行う場と、村民が自由に使える憩いの場として使われます。上下階の用途の違いに加え、災害時と通常時で求められる機能が異なるという点を意識して設計に取り組みました。

Photo:Kenta Hasegawa

木造建築における遮音の課題とユカテック採用の理由

床材にユカテックを採用された経緯をお聞かせください。

福田様:木造は地域材を活用でき、熱環境性能の面では優れていますが、どうしても課題になるのが遮音性です。特に災害時には多くの人が集まり、昼夜を問わず活動が行われます。その中で上下階の音を抑えることは非常に重要でした。

今回は、木造の軸組み構造を意匠的に表現するため、梁を見せる仕上げを採用したいと考えました。一方で遮音性を確保するなら天井で構造を隠しグラスウールを充填する方法が一般的です。木を見せれば遮音性が弱くなり、遮音性を高めれば構造が隠れてしまうという課題がありました。

そこで、床構造体の上にユカテックを設置し、その上に合板を敷いて二重床を構築する方法を選択しました。これは、低コストで効率的に遮音効果を確保できる工法です。さらに、ユカテックがALC素材であり、防火性に優れているというのも、プロジェクトの趣旨に合致していると考えています。

ユカテック×OAフロア、現場での施工性と仕上がりの印象

実際に施工された際の印象はいかがでしたか。

福田様:ユカテックは乾式パネルなので現場での取り回しがしやすく、施工は非常にスムーズでした。ユカテックを組み込むことで遮音性を確保しつつ、設計意図に沿った空間表現が可能になったと感じています。

竣工後の反応についてはいかがでしょうか。

福田様:内覧会や各賞の審査等では、木造を活かした災害対策拠点施設を実現していることについて喜ばしいことに高い評価をいただいております。目立たないところですが、ユカテックを採用して遮音性を高めていることなどは同業者の関心も高い部分でした。

ただし、椅子を引く音などの軽衝撃音については、RC造と比較するとやはり課題が残ります。重歩行音についてはユカテックの効果で抑えられていますが、完全な解決には至っていません。防音材の追加や床構成の工夫など、さらなる対策を検討していく必要もあると感じています。

Photo:Kenta Hasegawa

床性能はトータルな視点で考える。災害に強く、地域に開かれた建築を

今回の経験を踏まえ、今後の公共建築における床材のあり方についてどのようにお考えですか。

福田様:床性能は単体の材料だけで語ることはできません。天井や壁の構成、配管・配線の取り回しなど、建築全体のディテール設計と組み合わせて初めて最適解が得られます。その中で、ユカテックのように遮音性と施工性を両立した選択肢があるのは非常に心強いですね。

今後は、より軽量かつ高性能な製品や、木造特有の変形にも柔軟に対応できるラインアップが増えていけば、設計者としての選択肢がさらに広がると思います。

最後に、今回のプロジェクトを総括していただけますか。

福田様:十津川村災害対策本部拠点施設は、災害時の防災拠点であると同時に村民の生活に根ざした建築でもあります。だからこそ「遮音性」や「安全性」を確保することが重要でした。

ユカテックの採用によって、木造でありながら十分な遮音性能と安心感のある床を実現できたことは大きな成果だと感じています。今後も、設計者として地域の方々が誇りに思えるような建築を提案していきたいと考えています。

本日は、大変貴重なご意見をお聞かせいただき、ありがとうございました。

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